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AO入試組と一般入試組の比較

概要 †

　近年における国公立医学部のAO・推薦率は目覚ましいものがあり、上昇の一途を辿っている。特に地方国立医学部で顕著であり、地域医療のために「若い地元の人材を」というスローガンを掲げて大量のAO組を獲得してきた。しかし、その「人材の質」という観点は語られることはあっても本格的に検証されたことはほとんどない。「AOは学力が低い」「勉強漬けでは得られない力がある」などと言われることはあっても真偽は不明だ。今回、AO入試組と一般入試組を比較検証した追跡調査（2013年、2014年）を基にしたAO入試に関する記事が発表されたのでここに提示したい。ただし、この調査は医学部医学科を対象としたものではなく、非医学部の学生を対象としたものである。むしろ医学科以外の調査の方が人材の質を見極めることができると思われる。というのも、今回の調査では年収を評価対象としているが、医師においては年収は人材の質とは無関係である。そのため、年収である程度の評価が下せる一般学部での検証は質を見極めるのに大いに役に立つと思われる。

研究 †

• AO入試は1990年、新設された慶大湘南藤沢キャンパス(SFC)の総合政策学部、環境情報学部が、欧米の大学入試制度などを参考に、書類審査と面接による入試を導入したのが始まりだった。
  • その背景に加熱する受験戦争への批判があり、学力以外での人物評価につながった。
• 大学入試全般において、2000年度入学者ではAO入試組は全体の1.4%であったが、2017年には9.1%にまで増加している。
  • 推薦入試組(35.2％)などと合わせれば、17年度に一般入試以外の方法で大学に入った大学生の割合は、実に、44.6％にも達している。
• AO入試の比重が高まってきており、2016年には京都大学もAO入試を取り入れた。
• AO・推薦入試の野放図な拡大で、大学生の学力低下という弊害も顕在化する。
• 学力不足の学生の増加は、大学の教育現場にも混乱を招き、AO・推薦入試に批判的な大学教員も増えた。
• 「教室内が右に一般入試組と左にAO・推薦入試組に分かれ二極化していました。AO・推薦入試組はヤル気がなく、、携帯電話をいじったり、いちゃついていたりして、講義をほとんど聞いていませんでした」
• この様子に危機感を抱いた西村氏が追跡調査を行い、2013年に結果を発表した。
  • 45歳以下の男子就業者の平均年間所得では、前者が551万円だったのに対して、後者が485万円でした。AO・推薦入試組のほうが、70万円近くも年収が低かった。
  • AO・推薦入試組の卒業生は、実務能力が低く、社会であまり評価されていないことを暗示しているのでは。
• 上記研究の発表により、西村氏のもとには様々な「AO入試組の失態」が届く。
• 2014年、大手メーカー9社の協力を得て、20代を中心とする技術系社員約1200人の学力調査も行った。
  • 数学の基礎学力を問うテスト(22点満点)の平均点では、一般入試組の卒業生が14.3点だったのに対して、AO入試組は13.0点、推薦入試組は10.6点と明らかに低かった。
• この研究を契機にAO入試に逆風が吹き始める。
  • センター試験の成績や評定平均を出願条件に組み入れるなどした。
• 近年では、「一定以上の学力レベル」＋「人物」という評価が主流になり、一般入試組よりも優秀な人材も見られるようになってきている。
• 中堅以上の大学では優秀な人材の確保に貢献しているが、底辺大学のAO組は退学率が高く、大学も二極化している。

参考文献 †

• https://president.jp/articles/-/34628

コメント †