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関連病院と医学部受験

概要 †

　関連病院とは、大学医局の人事派遣の範疇にある医療機関を指す。資本提携があるわけではなく、多くは人脈により病院と医局との関係性が構築される。「〜〜大学付属〜〜病院」は関連病院には含めない。ほとんどはいわゆる「病院」であり、入院設備を有している施設である。また、病院の中でも診療科によって関わっている大学医局が異なることはよくある。受験に際して、多少なりとも関連病院の話題が出るためここに記しておく。以前はドイツ語のsitzを流用して「ジッツ」と呼ばれていたが、最近はあまり使用されない。

医師の派遣 †

　日本の医療事情として、病院数に対して医師数が少ないという状況がある。そのため、各医療機関は医師確保に尽力しているが、その一つが医局からの医師派遣制度である。医局は派遣会社であり、医師は派遣社員である。ただし、給与自体は関連病院から直接意思に払われる。関連病院は医局からの派遣医師を受けることで質の担保された医師を確保でき、その医師自身も関連病院からの給料で懐が潤う。そのため、大学医局は医師を薄給で雇うことができ、3者にメリットがあるのだ。

関連病院 †

　では、関連病院と医局の関係はどのようにして出来上がるのかというと、人脈である。「医局員がかつて働いていた」「元医局員が部長をしている」「医局員が開業した」等の人脈により、医局との関係ができ、「では次の新入局員を派遣するのでよろしくお願いします」と言った口約束から始まる。とすると、関連病院と医局の関係は絶対的なものではなく、時代によって変動する。例えば、A大学の准教授がB大学の教授になったとすると、かつてA大学の関連病院であった病院群はB大学の関連病院に変わることもある。また、人脈のつながりが2大学あり、2大学の医局員が出入りしている病院の診療科もある。
　人脈での関係構築であるため、歴史の古い医局が圧倒的に有利である。確かに上記のように教授選の動向に加えて部長クラス以上の人事によって関連病院が移動することもあるが、それはどの大学にも起こりえることである。古い医局の方が人脈が豊富であり、多くの関連病院を抱えている。とすると、「関連病院のポスト」も豊富に持っているということになる。

ポスト †

　関連病院のポストとは、これまた非常に重要な医局の持ち物である。大学医局員のキャリアパスとして、講師→准教授→教授と出世していく道があるが、全員が全員この道を歩めるわけではない。それは当然であり、一つの診療科で主任教授には一人しかなることができないし、教授自体も数人しかなれない。とすると、その道を途中で断念せざるを得ない医師が出てくるが、そうした時に「C病院の診療部長」などというポストを医局が確保していれば、教授の道を断念した医師はその役職に就くことができる。市中病院の部長であれば決して悪くはなく、教授よりも給料の高い可能性もある。逆に、そのポストが確保されていないと断念組は自身で市中病院を探すか開業するかしかなくなる。自身で探すとしてもいきなり部長クラスのポストを見つけることは非常に難しいであろう。となると、開業するしかなくなってしまう。開業というのは出世を目指していた医局員にとっては最終手段なのである。メーカー勤務サラリーマンが開業医まで成り上がったというような記事があったが、これは全くの間違いで、「開業医まで成り上がった」とは言わず、開業するしかできなかったと判断されるのだ。
　関連病院ポストがあることで医局員は安心して研究と臨床に励むことができる。長く医局にいることができる。ただ、ポストがないと、医局に長居してもリスクが大きくなるだけで、教授になれないと分かった時点で早めに見切りをつけて医局を辞めてしまう。そうしないと開業するしか選択肢がなくなってしまうからだ。早めに辞めて、出世を目指せる病院を若いうちに探すことになる。そうすると、医局の人数が減って医局の勢いがなくなる。衰退するのだ。なので、関連病院はとても重要なのである。

受験と関連病院 †

　かつては「入学大学＝自身の所属する医局」であったが、現在は事情がだいぶ異なっている。入局はどこもほぼ自由にできる。とすると、受験では関連病院に関してさほど神経質にならなくてもよいが、出身大学であれば入局後の仕事がしやすいことも事実である。少しは参考にしてもいいかもしれない。
　ちなみに、私立医学部は「開業医養成」のための大学であり、OBは開業医が多い。となると、勤務医で出世している人は少ないということになる。となると、必然的に医局が確保している病院のポストも少ないということになる。じゃあ、「開業するか・・・」となり、開業医の生まれる連鎖が出来上がる。勤務医で出世を目指すならば国公立の医局に入ることが望ましいのではないだろうか。そのためには、国公立医学部に入ることがベストである。

コメント †