初期研修は再受験生最後の関門と言ってもよい。この段階までが同期と肩を並べて勉強していく度合いが大きく、年齢を強く意識させられる。同期の飲み会とか診療科ごとの情報交換とか、学生の名残がまだ残る。一方で、学生とは異なり仕事であるため、個人にかかる負担は大きくなる。
初期研修と言うと「激務」のイメージであるが、実際は病院によって異なる。そのため、各病院の雰囲気を掴んで自身の目的に合う研修先を選べば激務に苛まれることは避けられる。大きく分けて3分割できるので、その傾向を解説していく。再受験生で激務に不安を覚える方は大学病院での研修でいいのではないだろうか。
種別 | 特徴 | |
1 | 人気市中病院 | 激務、優秀 |
2 | 大学病院 | 学生実習の延長 |
3 | 不人気市中病院 | 現場に行くだけ |
マッチングという研修先を決めるシステムにおいて、3倍以上の第一志望倍率を上げている病院である。共通項は、「勉強になる、経験を積める」であり、総じて激務である。それでいて給料は安いことが多い。ただ、大学病院よりは高い。こうした「給料が安くて激務」という就職先が人気になるというところが医学生の上昇志向を窺わせる。人気病院だけに人材の選抜がおこなわれ、同期も優秀な人が多くいる環境になる。確かに、研修医の時に経験を積まないとそれ以後学習の機会がなくなってしまうものもある。特に、自身の診療科以外の科は研修医の時に学んだ知識がほぼ最終形態になるので、ここでの頑張りは重要である。また、市中病院で辛いことは当直である。2次救急のファーストタッチを研修医が行うところが多く、夜眠れないことは当たり前である。ただ、自身で考えて診察しなければいけないので、この当直が一番勉強になったりする。
ちなみに、私の研修先もこのカテゴリーに分類されるが、非常に苦労させられた。というのも、本来看護師のやるべき当直対応中の点滴の準備や患者の搬送等を全て研修医が行うことになっており、診療をしながら看護師業務も並行して行わなければいけなかった。次から次へと患者が来る中で、CT室への患者搬送などを研修医2人で手分けして行わなければいけなく、手が回らなかった。また、病棟業務においても、採血や末梢ライン確保など、本来であれば看護師の業務も研修医にさせられ、ここでも診察時間が削られた。当直中に「点滴が入らないので来てください。今すぐ来てください」と電話があることも何回もあった。当直時の指導医も夜間は寝ていて当直室から出てこない。電話で状況を知らせて「あ、わかった」で終わり。いつかは重大なミスの出るシステムであり、研修医への負担は尋常でないぐらい大きい。
その後、研修を終えて大学を含めていくつかの病院をみてきたが、研修医がこれだけの雑用を押しつけられている病院はない。むしろ、研修医は患者搬送もしないし点滴の準備もしない。それは看護師の業務なのだから当然である。私の病院ではこれが平然と研修医に押し付けられ、そうすることで研修医の地位がさらに低くなり、看護師から罵られることも多くみられた。看護師が看護師を多声で罵っている現場も多く見られ、そうした光景もこの病院以外では見たことはない。
振り返ると、現場が完全に腐敗していたのだろうと思う。看護師業務を研修医にさせることは病院の方針として決まっていたことではなく、腐敗した現場で誰もチェックしないから自分たちの都合のいいようにそうした風習にしたのであろう。その病院は医師の看護師も仲が悪く、手のかかる救急患者が来るとあからさまにやる気のないそぶりを見せる看護師もいた。また、看護師のパフォーマンスも悪く、看護師のミス(アラーム無視)で患者死亡が起きたことで新聞にも載っていた。
今考えることは、高倍率の人気病院は皆このような理不尽な現場なのであろうかということである。研修医がこき使われる→地位が低くなる→あらぬ仕事を押し付けられる、というスパイラルに陥っていないかどうか。私はこの病院はお勧めしたくないと切に思ってしまう。
給料は安いが仕事は楽である。大学病院というのは上記人気市中病院に行けなかった人や行く気のない人が集まり、全員ではないが同期も消極的な人が多い。とすると求められるハードルも下がる。人数も多いために競争意識も希薄になる。少人数で序列づけされることが一番つらいがそれもない。また、当直が極めて楽だ。診療科ごとの当直対応となるため、来ても1番で数件である。また、診察時は指導医と一緒であり、一人で責任を負わされることはない。眠れないなんてことはまずない。ちなみに私の大学でも研修医はいたが、そのレベルは市中病院と比較して天と地ほど違うと感じた。詳細省く。また、看護師が私のいた市中病院と比較して何倍もの仕事をしてくれたことに驚いた。ここならば再受験生でも十分耐えられるだろう。
マッチングで定員割れするような病院やマッチングに参加していない病院である。国試浪人や研修脱落者などのわけあり研修医を受け入れている。「お客さん」扱いで、給料も高い。ただ、勉強にはならない。私の後輩もこの手の病院で研修をしたが、とにかく楽、マイペースで過ごすことのできる環境である。当直も入りたいときに入っていいし、指導医の横にちょこっとついて見学するだけなので何も負担はない。ドロップアウト者でも十分にこなせるシステムが組まれており、誰でも研修修了できる。ここを選ぶのも手ではあるが、知識としては何も得られないというデメリットがある。
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