男性看護師は金銭的に厳しい
2020-12-20
10:26:20
医学部受験とはあまり関係ないが、同じ医療職ということで看護師さんのことも書いてみる。ただ、再受験とは意外と関係があって、就職氷河期(2000年前後)の時に手に職をつけようと看護学校の再受験者、それも男性がちらほら現れ始めた。確かに、氷河期の頃は「仕事がない」という状態だったので資格があれば仕事の有無に関しては心配は無用となる。しかし、男性の場合、看護師だと将来設計するうえで給料は少ない。
看護師のメリットとしては「仕事はある」という点である。そこら中の病院で看護師を募集しているので仕事にあぶれることはない。ただ、これは裏を返せば終身雇用が成立しないということだ。終身雇用とは文字通りであるが、その語句には年齢相応の役職と給料の上昇という内容が含まれている。例えば、トヨタなどの大手メーカーや公務員などは、社歴と共に立場が上がり給料も上がるという当たり前と思われている仕組みがある。新入社員は平社員で400万円で、30歳係長700万円、40歳課長1000万円など、ランクが上がっていく。これは、入社時入職時の間口を絞っているからこそできる話で、看護師のように「いつでも雇いますよ」という職種では全員が幹部になることは不可能であり、成立しない。選ばれた者だけが看護師長や看護部長になれるのだ。看護師数十人いる中で看護師長は一人だけなんだから、なかなかの競争率である。で、どんな人が看護師長になるのかというと、「その病院で勤続していて仕事のできる人」ということで、看護師免許の「いつでも転職できる」という最大のメリットとは相反してしまう。看護師として出世したいならば、病院を変えずに一つの病院で勤続しなければいけない。40代、50代の平看護師がいることは当たり前である。
終身雇用が成立しないので給料の伸びが悪い。これは「看護師」という職種に給料が払われているイメージで、ほとんどの看護師は400万〜600万円である。以下、月給ベースで大変わかりづらい資料だが、参考までに。
総支給額 | 割合 |
20万円未満 | 0.30% |
20〜25万円 | 4.90% |
25〜30万円 | 13.50% |
30〜35万円 | 21.50% |
35〜40万円 | 19.70% |
40〜45万円 | 13.90% |
45〜50万円 | 9.70% |
50〜55万円 | 5.30% |
55〜60万円 | 2.70% |
60万円〜 | 0.80% |
基本給 | 非管理職 | 専門職 | 主任 | 副師長 | 師長 | 副部長 | 部長 |
平均年齢 | 53歳 | 43.9歳 | 50.1歳 | 51.3歳 | 54歳 | 54.1歳 | 56.7歳 |
25万円未満 | 13.00% | 10.90% | 13.10% | 8.70% | 5.00% | 2.10% | 2.40% |
25〜30万円 | 24.70% | 23.80% | 25.20% | 14.40% | 14.10% | 7.40% | 7.60% |
30〜35万円 | 26.20% | 30.50% | 21.00% | 16.50% | 17.10% | 9.50% | 11.60% |
35〜40万円 | 25.40% | 25.00% | 26.40% | 39.50% | 29.60% | 30.00% | 20.10% |
40〜45万 | 8.70% | 7.20% | 11.30% | 17.20% | 21.10% | 29.80% | 26.50% |
45〜50万 | 1.50% | 1.70% | 1.90% | 2.60% | 7.60% | 12.20% | 11.60% |
50万円以上 | 0.50% | 10.90% | 1.10% | 1.20% | 5.50% | 9.10% | 20.10% |
年齢を問わず年収400〜600万程度で落ち着き、師長クラスになると800万ぐらいは視野に入ってくる。なので、女性が「結婚するまで」とか「結婚してパートで」というキャリアプランを描いて看護師になることは非常にいいが、男性が生涯働き続ける職種としてはなかなかハードなものである。そんなに有名ではない企業でも年次が上がれば1000万円ぐらいは稼げるようになるため、最初は良くても後々給料面ではほとんどの会社員に水をあけられてしまう。また、どこの病院も退職金含めた福利厚生は手薄なので、同じ年収500万円でも会社員のそれとは対等に比較することはできない。なので、再受験に踏み切る時はキャリアプランをよく考えてからが望ましい。
なぜこのようなことを書いたのかというと、世間では「看護師は給料が高い」とか「看護師の奥さんがいれば金銭的にだいぶ余裕ができる」とかいう話をちらほら聞くからだ。以前、facebookでそのような話題が出たときに、林さんという女性看護師(平)が「看護師の給料の高さは見たことある人なら知ってますよね(笑)☆」(ほぼ原文まま)と話されていて、「え、そんなに高いのか?」と疑問に思ったことがあったからだ。林さんの場合はその他にも「給料を聞かれて看護師のお金目当てで近寄られてるのかな」とか「看護師っていうだけで給料聞かれますよね☆」とか、なかなかご自身の給料を相当高いと思っていらっしゃる方で、ぶっ飛んだ金銭感覚なのかもしれない。400〜600万を高いといえばそれまでだけど、30代40代の男性の給料としてみるとそれほど「(笑)☆」というほどではないとは思うのだが。コロナのために看護師が不足していて月給50万円で雇うとかいう話もあるが、結局は年収600万円+αぐらいである。(参考:https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12200557/?all=1)
なので、「看護師の給料は高い」というイメージに惑わされて男性が受験してしまうと将来的にとんでもなく大変な状況となってしまうのである。今、氷河期世代の再受験看護師が30代〜40代に差し掛かり今後どうなるかである。決断は慎重にしたい。
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