4年制大学を卒業した「学士」を編入させる試験である。医学部2-3年次に編集できるが、現在の主流は2年次前期である。ちなみに2000年代の学士編入試験では3年次の編入が主であった。この時は学士編入試験の手探りの時期であり、おそらく3年次の編入では余程優秀な人材でもない限り大学側としても割に合わないと思ったのであろう。私の友人がこの時期に3年次へ編入している。私立文系出身である。
本制度は、元々はアメリカのメディカルスクールの発想であり、受験勉強のみで査定された高校生以外の多種多様な人材を獲得したいという思惑があった。中には研究医を前提とした募集を組むところもあった。しかし、試験は次第に対策され、単に医者への近道ととられる場合も少なくはない。
医学部の学士編入試験が盛んになり始めたのは2000年代前半である。それまでは、大阪大学医学部ぐらいしか本格的な試験は実施していなかった。盛んになったきっかけとしては、2000年に出された文部科学省の通達である。「社会経験を積んだ人材を医学部に編入させろ」と。アメリカのメディカルスクールの真似である。潜在的に「高校を出て医学部に入って狭い世界で過ごして世間知らず」という不満が日本の医師に対しては存在していたので、学士編入は一気に広まった。各大学5〜10名の定員、3年次編入で募集を開始した。メディカルスクールも4年生であり、3年次編入はそれに倣っている。名古屋大学医学部や千葉大学医学部は研究医目的に募集を開始した。
年 | 出来事 |
1975年 | 大阪大学医学部が編入制度を開始した。 |
1988年 | 東海大学医学部が学士編入制度開始 |
1990年頃 | バブル期の為に編入希望者が減少。 |
1990年代前半 | バブル崩壊により編入希望者が増加。 |
1997年 | 河合塾KALS設立 |
2000年頃 | 学士編入試験を始める大学が増える。 |
2004年 | 36大学で総定員約260名の枠にまで拡大した。 3年次編入がメインであり、前大学で学んだ知識を生かしてもらう目的での編入生を募集していた。 この時期の編入生は上質であり、純粋に理系エリートが選抜された。 大阪大学の追跡調査でも、編入生の業績は良好であると。 |
2000年代後半 | KALS勢が勢力拡大。 私立文系出身でも国立3年次編入に次々と合格した。 「一般入試では受からないから」という層もKALSで受験対策をして学士ならば合格した。 |
2010年代前半 | 3年次編入→2年次編入へ変更の流れが始まる。 その背景には、KALSで試験対策をされた一般入試にも合格しない層が多く合格したことが挙げられる。 結果的に採用側の期待に応えられず、採用の規模を縮小することとなった。 |
2010年代後半 | 規模の縮小。千葉大学、杏林大学、愛知医科大学が採用を中止とした。 |
2019年 | 34大学220名の規模にまで縮小した。 |
学士編入試験は縮小傾向にある。2000年代より本格的に開始され、その卒業生がある程度出揃ったのが2010年頃。しかし、近年多くの大学は3年次編入から2年次編入にシフトし、定員も削減した。
日本の場合は「他分野で培った知識を生かしてキャリアアップしていく」という土壌が整っていないため、学士編入のような試験を根付かせるのは難しいのかもしれない。
学士編入試験の人気は低迷しつつある。学士編入試験が興隆してきた2000年代は医学部人気が絶頂の時であった。2000年前後に大学を卒業した就職氷河期世代がこぞって受験し、編入試験はとてつもない倍率となった。大量採用をしていた滋賀医科大学や東海大学医学部では600名を超える受験者が殺到し、数十倍の倍率となった。しかし、就職が安定し、というより、空前の就職好景気により相対的に医学部人気が低下したことで、学士編入試験の志願者は着実に減っている。一時600名を超えた滋賀医科大学も、2018年は200名程度の受験に終わった。学士編入試験における受験者層には、「就職活動に失敗したから」という層が一定数はいて、その人たちの多くが文系出身であったために一般受験には至らず学士編入試験の倍率増進に寄与していた。好景気によりその層が格段に減ったのである
基本となるのは、英語、生命科学、小論文、面接である。物理・化学は大学レベルを出題する所もあるが、近年は高校範囲で対応できる大学が増えている。
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