2020-12-16
22:28:43

大学病院の研修医は使えないとの記事を書いたばかりだが、幻冬舎の記事でも研修医のぬるま湯化が話題として取り上げられた。


  • 2004年、それまでの新人医師への待遇の悪さを改善する為に研修医制度が始まった。
  • 「新医師臨床研修制度における指導ガイドライン」には「研修医に優しく」というような内容が書かれている。
  • 「17時以降はフリー」「単独当直なし」「厳しい叱責もなし」「体調不良時には休んでも可」といった自由な2年間を過ごした医師が、いまさら素直に医局の駒にはなるはずもなかった。
  • 新研修医制度をきっかけに、封建的な大学病院を嫌って都会の一般病院を目指す若者が増え、大学医局の衰退が始まった。
  • 研修医制度は大学医局の凋落を助長した。

と、読んでみると新専門医制度(2018年頃?)のことではなく、随分昔の2004年に始まった研修医制度(いわば普通の研修医制度)のことを「新研修医制度」と言って書いている。記事の話題は10年古いと言わざるを得なく、なぜ今書いたのであろうか。それは置いておいて。「研修医の能力が低い」ということは焦点ではないが、間接的に言及している。
 実は、大学病院では最近このぬるま湯化がさらに助長されていて、当直明けの日は朝すぐに帰宅するなど研修医の保護制度がぬかりなくなっている。「当直の次の日に帰るなんて当たり前じゃん」という指摘もあるかとは思うが、大学研修医の当直は寝当直である。これが市中病院の2次救急の当直であれば朝すぐに帰宅させなければいけない。しかし、そういった人気市中病院の方は研修医が保護されておらず、眠れない当直をこなしてなおかつ次の日の日勤もこなさなければいけないのだ。上記参考文献では、外の病院で自由にやってきた研修医が大学のきつい縛りのある環境には戻ってこないだろうとの記載であるが、大学での研修は非常に楽なのである。楽すぎて、「自分は何でもできる」と勘違いして外に出ていく人もいれば、無気力で就職活動せずに大学に残る人もいる。
 研修医の時の学びは結構重要で、基本的な知識だけではなく全科に共通する患者の扱い方、治療計画の立て方などの基本を学ぶ。大学病院以下の研修医はおそらくそれは習得できていないであろう。また、自身の専門科以外の知識は学生時代と研修医時代に学んだ知識が全てと言っても過言じゃないので、医師としての幅を付けるならば研修医時代はしっかりやっておいた方がいい。私の大学病院では月に数回しか病院に来ないで研修医を卒業していった人とかいて、絶対に人命にかかわるミスをするだろうなと思ったことがある。そしてそのミスに気付かずに何回も繰り返すであろうと。その人は研修中は特に何もせず、終了時のプレゼンの際は私のカルテのコピーを読み上げるだけで意味もわからず心電図所見で「narrow QRSがあります」といった。narrow QRSとは私の書いた所見であるが、これって「正常」という意味なので「narrow QRSがあります」なんて言い方はまずしない。学生レベルのことが分からないのだ。こんな医師が量産されるのが大学病院なのである。

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